
柴田あずさがお届けする、カインドフルなムービーセレクション。今回ご紹介する映画は、94歳のフレディリック・ワイズマン監督の作品『至福のレストラン/三つ星トロワグロ』。一体どんなストーリーなのでしょうか?
召しませ、三ツ星のものがたり。美食家たちも夢見る場所へ
こんにちは。柴田あずさです。
「食」は心もお腹も満たしてくれる最高の癒し。
今回ご紹介する映画は、三つ星フレンチ「トロワグロ」を舞台にしたドキュメンタリー・フィルム。このレストランはフランスのウーシュに佇む豊かな自然に囲まれた場所にあり、美食家たちも夢見る場所だそう。是非、この作品で映画旅行をした気分になってくださいませ。
何とこの映画、上映時間は240分!すごく長編作品なのですが、アカデミー賞名誉賞受賞監督は飽きを感じさせることなく、ものがたりを料理をしてくれています!実在するレストランを描いたこの作品は、まるでレストランの一日のように見えるドキュメンタリーに仕上がっています。
世代継承……受け継がれる「味」と家族の肖像
映画の中に登場する【トロワグロ】はホテルも含めて5店舗あります。家族経営ということもあり、レストランはいわば家族の肖像でもあるのとも言えます。
メインのオーナーシェフは3代目のミッシェル。初代から55年間に渡りミシュランの三つ星を持ち続けています。その他、奥様、4代目の長男セザール、次男レオのファミリーがそれぞれを仕切りっています。レストランは、家族が守ってきた味を受け継ぐ【世代継承の場】でもあります。そこで繰り広げられるものがたりは、私たちに様々なメッセージを投げかけてくれます。
見所は鮮やかな食材が並ぶマルシェでの買い出しから、メニュー会議。まるで家族会議のように父親のミシェルがなんだかんだと口を挟みますが、情報を分かち合い「残すべき味」を大切に守っている姿勢も伺えます。テーブルにお料理が並ぶまでのアートとも言える見事なプレゼンテーションは圧巻。ミリ単位のズレも許さぬテーブルセッティングや高価なワイン選びに至るまで細心の気配りには目を見張るほど。これらがドラマティックに美しい映像と共に展開されます。
日本贔屓であるミシェルのお料理には牛の脳みその上に赤シソの素揚げが乗せてあったり、ウナギの切り方も心得たもので醤油や味噌なんて言葉も厨房で飛び交います。メレンゲに小さなフルーツをあしらったデザートプレートは宝石のようなので「ミキモト」なんてネーミングも。光の照明までも考慮し創られたお料理を監督は「儚い芸術作品」と称するほどです。無限の可能性を追求しています。
五感をフルに!あなたも、彼らの人生を記憶に刻む体験を!
もう一つのポイントは父親のミシェルが交わすお客さんとの会話。ここにもストーリーがあります。遠くからやって来た結婚50周年記念日をお祝いするご夫婦を暖かく接待したり、別のテーブルではミシェル自身の日本での思い出や、自分の両親の世代から引き継いだ時の本音をお客さんにポロリと話したり。
大きな一歩を踏み出す後継となる息子の店を「何もかもが美しい」と誇り、新たな可能性が広がることや、光のような新しい風が入ってきたと言う表現は、父から息子へ、次世代に希望を託す様子が鮮明に描き出されており、言葉にできない感動がありました。
美しいお料理を愛でながら、美しい家族のもがたりを記憶に刻む体験をまずは映画館でしてはいかがでしょうか? 五感を十分に満たしてくれる五つ星の美味しい作品です。
映画『至福のレストラン/三つ星トロワグロ』
2023年製作/240分/G/アメリカ原題:Menus Plaisirs - Les Troisgros配給:セテラ・インターナショナル劇場公開日:2024年8月23日













