
柴田あずさがお届けするカインドフルなムービーセレクション。
今回、ご紹介する作品は公開中の神山従二郎監督による『シンペイ〜歌こそすべて』。音楽の素晴らしさを描いた日本の音楽映画です。
歌というのは時に素晴らしい効果を私達にもたらしてくれるもの。懐かしい曲に涙したり、気分が高揚したり癒されたり。時代は違えど、歌が私たちに与えてくれる素晴らしさは、いつも素敵なものです。
時代を創った音楽業界の重鎮たちを、名優が熱演
この映画の主人公は中山晋平(1887~1952)氏。彼は明治に生まれ、大正・昭和を生き、今も歌い継がれる童謡、歌謡曲、音頭、民謡まで幅広いジャンルの約2000曲を残した作曲家でした。映画ではその生涯を、紡いだ音楽とともに綴っていきます。
晋平役は映画初主演となる歌舞伎俳優・中村橋之助。『シャボン玉』などを手掛けた作詞家・野口雨情役の三浦貴大をはじめ、渡辺大、緒形直人などの名優が、激動の時代を生きた音楽業界の重鎮たち演じます。また『東京行進曲』の歌い手で、晋平、雨情と〝全国歌の旅〞に出る歌手の佐藤千代子役には、歌手の真由子を起用。豪華なキャストたちが映画を彩ります。
日本の音楽の凄さの原点を知る映画
現在は世界中で空前の日本ブームは起こっているそうです。中でも日本の音楽への注目は、いつになく高まっているとか。去年、アメリカから帰国中の友人からアラバマ州の田舎の雑貨屋さんで杏里の曲が流れていたなんて話を耳にしました。日本の音楽シーンもここまでやって来たか?という時代の変化を感じましたがその流れは、この映画に登場する人物から始まっていたのです。
この時代の名曲で、我々の世代でも知っている曲だと、黒澤明監督の『生きる』(1952年)で主演・志村喬が歌った『ゴンドラの唄』や、大正時代に流行っていた『カチューシャの唄』などは広く知られていると思います。また、未だに幼稚園などでも歌われている『シャボン玉』に『てるてる坊主』といった童謡。この映画は、日本の音楽の凄さの原点を知る作品と言って間違いありません。これを一本観るだけで、日本の流行歌のルーツを知ることが出来ます。
脇役が光る作品。歌手の真由子にも注目!
オープニングは昭和4年のビクターのスタジオから始まります。初の映画タイアップ主題歌『東京行進曲』の収録スタジオで、レトロ感いっぱいといった感じ。ブースに入って佐藤千夜子を演ずる真由子が歌うシーンは、最初から観客の心をしっかりと掴みます。
佐藤千夜子は劇中でも何曲かを歌うのですが、そんな中で心に残ったのはシンペイと野口雨情が手がけた『シャボン玉』です。ここの曲は幼い時に天昇した子供達への歌であるという説や、人の人生はそれぞれであるということも表していると諸説があり、そうした説をご存じの方もいるかもしれません。今作では作詞家の野口雨情が子供を亡くした時に、シンペイに心情を打ち明け、共に作ったと描かれています。
それ以外にも「全国歌の旅」に出た佐藤千夜子が訪れた先で歌ったシーンは本当に素晴らしいものがあります。演じた真由子もまた歌手ですが、その演技力も圧巻です。音楽映画に欠かせない本物の歌唱力にも圧倒されるものがあります。こうした脇役が光る映画というのも、また面白いところです。違うジャンルの映画ではありますが真由子の演技を観て、「アリー/スター誕生」や「ジョーカー2」のLady Gagaを思い出しました。
すべての音楽が、今にまでに繋がっている
この作品は単なるミュージック・バイオグラフィを超えるものがあります。シンペイが生きてきた当時の風景や時代の移り変わりを描き出し、それらの情景を音楽でタイムトリップができるという贅沢を、思う存分味わえます。ロケ先は自然が豊かな長野県。その美しさも見所です。
音楽担当を手掛けたのは意外にも北野武監督の『その男、凶暴につき』の久米大作で、シンペイの全曲はすべて新録音だったそう。
そして映画の締めくくりとして、俳優の上條恒彦さんが『ゴンドラの歌』を歌うのですが、これが重厚感あってホントに格好良いのです!深みのある声が素晴らしい!
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この映画は最初から中山晋平が最期を迎えるまでを描いていますが、とにかくすべてが音楽中心。彼にとってはまさに歌こそ人生だったのですね。劇中で「歌は死なない!」と声を上げるシーンがありますが、まさにそう。彼が手掛けたすべての音楽は、今にまでに繋がっているのですから!いまだに私も翌日がお天気であってほしい前日には「てるてる坊主」を口ずさみます(笑)。年齢を問わず多くの世代に楽しんで頂ける作品です。
『シンペイ〜歌こそすべて』
2025年1月10日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて公開
公式サイト:http://shinpei-movie.com/
©「シンペイ」製作委員会2024














